ファントム×カウンターSS「そして今日も少女は嘆く」 著者: スモモかすみ 元帥

ファントム×カウンターSS「そして今日も少女は嘆く」 著者: スモモかすみ 元帥 – 怪異対抗奇譚TRPG『ファントム×カウンター』 ルルブ無料公開!現代異能オリジナルTRPG制作中!「えええええええ!?なんなのこれええええ!?」
私は今混乱している、というのもこの状況が原因だ。

今私の目に映るものは、一匹の獣?とそれに対峙する二人の少年だ。
一人は篭手をつけて拳をぶつけ合い、今にも獣?に対峙せんといわんばかりで、一方、もう一人の方は神主のような格好をしており、やれやれという表情をしている。
そして目の前の獣?は亀と鶴が合体したような奇妙な外見をしている。

こんなことに巻き込まれるなんて、私が一体何をしたというのだろう。

今日、先日無事に中学を卒業できたものの公立の高校までも落ちてしまった私は酷く落ち込み、ただがむしゃらに、行く当てもなく家を飛び出した。
プレッシャーから逃げたくて、世間の目から逃げたくて。
昔から私はいつもこうだ、なにか重要なことがある度に不幸に巻き込まれてしまう。
今回の受験だってそうだ、受験当日に急に体調を崩してしまった。
頭がふらふらする中で必死に解いたが無駄だった、ということだ。
いつもこう・・・・・・どうして、どうして、どうして・・・・・・。
悔しい思いと諦観の思いが頭のなかをぐるぐるとかき回す。
もういっそ、親に迷惑をかける自分なんていなくても良いんじゃないか。
そういう気持ちが心の底にあったのか、人気のない森の中に入ってしまう。
今が何時だかわからない。ひたすら一日中ふらふらしていたものだからしょうがないと思う。
ただ、空模様から夕暮れに近いんだろうなと思う。
そうだ、このまま夜になれば森の中で誰にも気付かれずいなくなれる・・・・・・。
これまでの心の疲弊からかそういう考えがぽんぽんと溢れてくる。
そのまま森の中を歩いてゆく・・・・・・。

ふと、気が付くと私は神社の前にいた。
山の中にひっそりと佇む寂れた神社。
神聖さはもう感じられず、怖いという印象のほうが大きくなっている。
そこでふと気がつく。
なんで今私はこの神社に神聖さがないと思ったのか、恐怖を感じたのか。
そして、夜になっているということを。
普段は働かないはずの私の直感が告げている、ここはまずい、逃げないと、と。
しかし、私の足が動こうとしてはくれないのだ。まるで石になったみたいに。
逃げようにも逃げれない私はクリアになった思考で逡巡する。
私はなんでここに来たんだろう・・・・・・なぜここに来た、いや、来たのじゃない。
―――――呼ばれた?
その考えに至った時だった。ぞっと全身に悪寒が走る。
全身に鳥肌が立ち、冷や汗が出る。
もしかしたら今までの不幸、ネガティブもこれの仕業かも知れない。

恐怖や動揺やらなんやらで頭がぐちゃぐちゃになる。
逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい逃げたい・・・・・・!!
まともに思考ができなくなった私に一つの音がする。
チリーン・・・・・・。
鈴の音だ。神社で聞くといつもは澄んでいて、ありがたいものに感じた。
なのに、今のこの音はさびしくて、恐怖を駆り立てる音。
チリーン・・・・・・。
その音は神社の方から、少しずつ近付いてくる。
今度はその音に混じって何かの声が聞こえる。鼻歌?みたいなものだ。けど何なのかはわからない。
チリーン・・・・・・。
鈴の音が更に近付く。鼻歌のようなものもやがてはっきり聞こえてくる。
このメロディは知っている。小さい頃から聞いたことのある曲。
チリーン・・・・・・。
鈴の音がより鮮明に聞こえてくる。鼻歌のようなものも。
そして、わかった。
これは鼻歌なんかじゃない・・・・・・小さすぎて聞き取れなかっただけ。
人の、女性の声・・・・・・だ。
メロディも歌詞も知っている私にはわかる。この曲に関する都市伝説も知ってる。

―――――この曲は、『かごめ かごめ』だ。

ハッと意識が戻る。どれだけ集中していたんだろう。
私は目の前の異常を目にしながらも認識できていなかった。
今までよりはっきりと、くっきりと鈴の音が聞こえる。
そしてそれは、目の前にいた。
亀の胴体に鶴の羽、亀の頭はなく、そこから鶴の頭が伸びている。
声が、出ない。目の前の存在に言い知れぬ恐怖しかない。
これからどうなるかはわからない。けれど、私は死ぬんだろうなという感覚だけがある。

うしろの正面、だあれ?

私の後ろ、すぐ傍から声が聞こえる。振り返りたくはない。
ああ、もう駄目だ。そう諦める私の視界の端に何かが見えた。

「ちぇすとおおおおお!」
次の瞬間、その何かは目の前にいた怪物に飛び蹴りを放つ。
あまりの情報過多にパンクしそうな私の思考にもそれは蹴りを放ったようで、
余計に混乱してくる。
目の前にいる飛び蹴りを放った少年とは別に遅れてやってきたもう一人の少年が言う。
「怪異、”かごめかごめ”か」
神主の装いの彼は、篭手をつけた少年に向けて叫ぶ。
「都市伝説から派生した新手の怪異だ!問いかけられても後ろを向くな!連れて行かれるぞ!」
それに対して篭手の少年はおーぅ、とだけ返すと”かごめかごめ”と呼ばれた怪物に突っ込んでいく。
神主の装いの少年はやれやれと言い、なんらかの術?らしきものを篭手の少年に施す。
混乱している頭に理解できないことをばんばんとぶちこまれていく・・・・・・思わず、
「えええええええ!?なんなのこれええええ!?」
私は、そう叫んでいた。
その私の声に神主の装いの少年が気付いたようにこちらに振り返り、正面から話しかけてくる。
「ふむ、巻き込まれたか。後ろは見るなよ、もう問いかけられたのだろう?」
問いかけられた、ということばにさっきのあれか!と思い当たり、ぶんぶんと首を縦に振る。
「そうか、まあでもあれを倒せば問題なくなるからな。安心せよ」
その返答に安堵の息が漏れる。
と同時に緊張の糸が切れて、意識も切れていく。
薄れていく景色の中、慌てる神主姿の少年が見えた。

次に目が覚めたとき、私は自宅にいた。
親が言うには少年に抱えられて夜中付近に帰ってきたとのことだ。
私は生きている。その実感に思わず涙が出た。

それとは別にもう一ついいことがあった。
後日、国守学園という高校から特待生としての通知が来た。
全部の高校から落ちた私にとっては渡りに船で、喜んで入学を決めた。
どうやらあの怪物が倒されたことで私の不幸はなくなったみたいだ。

そして、入学式。
うららかな春の陽気に舞う桜の花びら。
絶好の入学日和の中で私は入学式を迎えることができた。
今までの人生の中ですっごく輝いている!
生まれ変わった初々しい気分で私は入学式の行われる講堂に入っていった。
そこには先輩としてこの間の少年がいて、これからあのような出来事に巻き込まれると予感させられてしまうようで。

訂正、私の不幸は終わっていなかったみたいです。